2017年のノーベル経済学賞の受賞者が決定しました。
米シカゴ大学のリチャード・セイラー氏です。
今回は、セイラー氏の著書で邦訳されている「セイラー教授の行動経済学入門」について紹介します。
なお原題は「The Winner's Curse: Paradoxes and Anomalies of Economic Life」であり、直訳すると「勝者の呪い:経済生活における矛盾とアノマリー」です。
とてもストレートな邦題となっています。
1.著者について
様々な媒体がセイラー氏のノーベル賞受賞の記事を掲載しているため、ここでは簡単な説明に留めます。
リチャード・セイラー氏は、2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏らともに「行動経済学」の研究分野を牽引してきました。
セイラー氏はインタビューに対し、「経済の主体は人間」とコメントしています。
素晴らしいの一言ですね。
関連コラム:
2.書籍の内容
(1)勝者の呪い
この書籍は、1987年から1990年にかけて「Journal of Economic Perspectives」に掲載されたコラム「Anomalies」を書籍として再構成したものです。
そのコラムの中でも特に有名なものが、1988年冬号に掲載された「The Winner's Curse(勝者の呪い)」であり、これがこの書籍の原題となっています。
勝者の呪いとはオークションにおいて生じる現象であり、「オークションでの落札者(勝者)は不当に割高な金額を支払っている可能性が高い」という経済的非合理性を指しています。
(2)内容について
さて肝心の書籍の内容ですが、1987年のジャーナル初掲載直後であれば非常にセンセーショナルな内容であったかもしれません。
しかし近年ではこれらの行動経済学の事例は広く知れ渡っており、あまり目新しい話はないかもしれません。
行動経済学について全く本を読んだことのない人であれば、1冊目として購入することは非常に良いと考えます。
以下、参考までに各章のタイトルを記載しておきます。
第1章 合理的行動モデルはどこまで正しいか
第2章 人はいつどんな理由から協力するようになるか
第3章 「不公平なら断ってしまえ」という意思
第4章 同じ職種なのになぜ給料に差が出るか
第5章 勝者は「敗者」となる呪いを掛けられている
第6章 手放すものは得るものより価値がある
第7章 選好の順位付けはプロセスの中で構築される
第8章 金利と割引率についての損得勘定
第9章 貯蓄と消費は人間的に行われる
第10章 競馬と宝クジにみる「市場の効率性と合理性」
第11章 株式市場のカレンダー効果
第12章 株価は平均に回帰する
第13章 クローズド・エンド型ファンドの不思議
第14章 金利差と為替レートの謎
また、シカゴ大学のセイラー氏のホームページに、これらの章の元となったコラム「Anomaries」の一覧が掲載されています。
このホームページから各コラムを直接閲覧することはできませんが、コラムタイトルでグーグル検索すると普通にPDFが落ちています。
その章がどのような内容なのか確認してみたい、という方はそちらの方法でもよいかもしれません。