近年のフィンテックブームに追随して、各証券会社が個人投資家向けに様々なサービスやツールの提供を開始しています。
上記の記事には、各証券会社が今年から提供し始めたサービスが一覧としてまとめてあります。
以下、引用です。
(出展:NIKKEI STYLE)
この中でも、やはり本腰を入れているのはカブドットコム証券であると思います。
カブドットコム証券は、多角的なAIサービスを様々なベンチャーと協業して提供しています。
今回、その内容を簡単に見ていきます。
1.カブドットコム証券のAIサービス
以下にカブドットコム証券のHPに記載されているAIサービスのイメージ図を載せておきます。
提供しているAIサービスは、大きく4つあります。
(1)Alpaca Search for kabu.com
協業企業はAIベンチャーのAlpacaDBです。
このサービスは、画像認識AIによるパターンマッチングにより、値動きの似ている銘柄を抽出するものです。
おそらくディープラーニングが使われていると考えられますが、手法についての開示はありません。
チャートから抽出する特徴量は230にものぼるそうです。
「ペアトレーディング」や「連れ高銘柄狙い」の戦略を支援する技術となっています。
(2)xenoFlash for kabu.com
協業企業はAIベンチャーのxenodata lab.です。
このサービスは、AIにより決算短信を瞬時に要約・配信するものです。
人間であれば読むのが面倒な内訳の情報もピックアップしており、増益や減益などの原因や背景までも解説するようです。
「イベント投資」を支援する技術となっています。
(3)ソーシャルモメンタム
協業企業はAIベンチャーのFINATEXTです。
twitterなどのSNSの書き込み情報から個別銘柄の注目度をランキング形式で掲示します。
あくまでも注目度に関するランキングであり、騰落率や将来の値動きを予測するものではありません。
「デイトレ」を行う方は、当日の売買銘柄の見逃しなどがなくなるかもしれません。
(4)リアルタイム消費財トレンド
協業企業はAIベンチャーのナウキャストです。
こちらについては、過去コラムで解説しました。
関連コラム:
2.所見
カブドットコム証券は、このように網羅的にAIサービスを提供しています。
各サービスはベンチャーとの協業を上手く利用しており、そのフットワークの軽さが見て取れます。
これらのサービスが個人投資家の利益にどれだけ結び付くかは分かりません。
しかし、少なくとも我々はこのような時世の流れを受けて以下のように行動するしかありません。
(1)提供されるサービスを熟知し、上手く活用する。
(2)提供されるサービスを元に改良を加え、さらに利益に繋がる仕組みを考える。
(3)提供されるサービスとは被らない、別の分野の開拓を進める。
(4)これらのサービスでは利益は出ないとタカをくくる。
(4)は論外です。
このサービスで利益が出るか出ないかは関係ありません。
常に変革することこそ、個人投資家に求められる資質だと思います。
最後になりますが、カブドットコム証券にはこれらのAIサービスを充実させるよりも、まず第一に法人向けのAPIを個人投資家向けにも解放してもらいたいものです。
株式投資のAPIは一部のベンダーや海外証券が提供する特殊なツールのみであり、一般には殆ど普及していません。
これでは証券会社が故意に機関投資家にアドバンテージを提供していると考えられても仕方がありません。