私は投資向けのAIの研究を行っています。
しかし研究機関などと違ってリソースはそれほど多くないため、何にでも手を出すというわけにはいきません。
よって、論文、レポート、ワーキングペーパー、公表物などを調査することにより、自らの研究に代えています。
今回は、国内の投資向けAI研究動向についてまとめてみました。
1.調査対象
調査対象としたのは、国内の学会、セミナー、研究会、省庁、銀行、証券会社、アナリスト協会等における論文や公表物です。WEB記事やニュースは含みません。
これらの中から、「投資(売買タイミング決定や銘柄選定)に直接もしくは間接的に応用が可能」と思われる論文で、且つ「具体的な手法」が記載されているものに絞ります。
概念的なものは除外します。
(例えば「投資分野へのAIの応用」や「フィンテックAIの動向」のようなもの)
今回は直近の2017年発刊のものが対象です。
2.調査結果
調査総数およそ100件の中から、上記の条件に当てはまるものを30件程度抽出しました。
残った殆どが人工知能学会の論文となっています。
(1)研究主体
これを見ると東京大学がおよそ1/4を占めており、精力的に研究を進めていることが分かります。
東京大学では和泉研究室の件数が多くなっています。
松尾研究室は幅広いジャンルを取り扱っており、投資向けに特化した研究はそれほど多くありません。
以下、岡田教授率いる関西学院×MagneMax、各投資機関と続きます。
当然ですが、ここに記載のない投資機関も研究を行っています。研究内容について公にしていないだけです。
以下、参考までに各者の著書を紹介します(全て購入しています)。
参考:東京大学 和泉教授の著書
マルチエージェントのためのデータ解析 (マルチエージェントシリーズ)
- 作者: 和泉潔,斎藤正也,山田健太
- 出版社/メーカー: コロナ社
- 発売日: 2017/07/21
- メディア: 単行本
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参考:東京大学 松尾准教授の著書
人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)
- 作者: 松尾豊
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版
- 発売日: 2015/03/11
- メディア: 単行本
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参考:関西学院大 岡田教授の著書
(2)研究分野
ここでは、それぞれの論文を3つに分類しました。
市場予測:機械学習モデルを使って売買タイミングや銘柄選定を行う分野であり、収益性等の確認結果が明示されているもの。
金融データ分析:市場やデータの持つ特徴を分析したものであり、直接収益性に繋がる結果の記載はないが、これを利用して売買モデルへの落とし込みが可能なもの。
テキストマイニング:金融分野におけるテキストマイニングの技術構築に関連するもの。
以下では、市場予測の機械学習手法についてまとめます。
(3)市場予測の機械学習手法
上記から分かるとおり、最近の研究動向ではニューラルネットモデルが非常に多いことが分かります。
特に使われているのがLSTM(Long Short Term Memory)です。
時系列データに対する予測精度が高いようですね。
ツリーモデルやロジスティック回帰が採用されることの多い機械学習コンペとは傾向が異なるようです。
データありきでモデルの精度を競う場合と、演繹的な考察をもとに値動きの特徴をあらわにする場合とでは、アプローチの方法が違うのかもしれませんね。
現場と会議室の違いというだけであり、どちらが優れるという訳ではないと思います。
3.所見
これを見ると「LSTMやってみようかな」とも思ってしまいますね。
誰か実際にLSTMで運用利益を出している方がいらっしゃれば、是非とも情報共有をお願いいたします。