10月14日(土)に人工知能学会の金融情報学研究会(SIG-FIN:Special Interest Group on Financial INfomatics)が開催されます。
この研究会は、ファイナンスにおける人工知能応用に関する研究会であり、東京大学の和泉教授が主査を務めています。
SIGFIN:
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この研究会は私好みの研究発表が数多く予定されており、その一部について簡単に紹介します。
断っておきますが、私はこの研究会の回し者というわけではありません。
私は単なる論文マニアです。暇があれば論文検索しています。
以下、紹介順序は発表時間順です。敬称略ですのでご了承下さい。
1.多層ニューラルネットワークとGAを用いたTOPIX運用AI
石原龍太(かんぽ生命)
TOPIX運用AIと聞いただけでワクワクしてしまいますね。
GAとは遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)の略であり、遺伝子を組みかえるかのごとく最適解を探索する手法です。
投資判断アルゴリズムの最適化の過程において、訓練データ(インサンプルデータ)と検証データ(アウトオブサンプルデータ)のインフォメーションレシオが、どのように向上していくか示してあります。
また実際の売買シミュレーションの結果から、ベンチマーク(TOPIX)に対して超過収益を得られるとのことです。
2.LSTM-RNNを用いたイベント考慮・時系列予測の試み
南正太郎(あすかアセットマネジメント)
RNNとはRecurrent Nueral Networkの略であり、時系列データを扱うニューラルネットです。
また、LSTMとはLong Short Term Memoryの略であり、RNNを発展させてバイアスなどの長期依存性を学習できるようにしたものです。
この論文は、株価の時系列データに加えてプレスリリースなどのイベント情報や機械受注高などのマクロ情報を変数として取り入れたモデルを作っています。
結果として、株価・イベント情報・マクロ情報の全てを取り入れるとモデルのパフォーマンスが向上することが示されています。
3.ファンダメンタルファクターモデルにおける機械学習手法の応用可能性検証
杉友盛佑(エピックパートナーズインベストメンツ)
この論文は、従来のファンダメンタルファクターモデル(重回帰モデル)に対して、機械学習モデルの優位性を検証したものです。
機械学習の手法には、SVM(サポートベクターマシン)、GBDT(勾配ブースティング決定木)、NN(ニューラルネット)の3種類が検証されています。
結果、ポートフォリオのパフォーマンスではNNが、累積誤差の観点ではSVMが優れており、投資モデルへの機械学習応用の可能性が示されています。
研究会のホームページでは本日から論文が閲覧可能となっています。
これは通常の学会ではなかなかありえないことです。
素晴らしいことですね。
また研究会への参加費も1000円(非会員可)と非常に低価格となっています。
最低限の運用費用しか徴収しないということです。
(ちなみに通常の人工知能学会の聴講費は、非会員(一般)は26000円です)
なお申し込み締め切りは10月6日であり、当日飛び入り聴講できるかは不明です。
論文を読むだけでも非常に勉強となるため、紹介した次第です。