私は現時点でおよそ1億ほどの資金を運用しています。
毎日、信用3倍をフルインベストメントしているため、日々の売買代金は3億近くになります。
日々の取引にはAIを使っています。
ここでいうAIとは、人工知能というよりも機械学習と呼んだ方がよいと思います。
今回は、私がどのようなAI手法を使っているか公開してしまいます。
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1.利益曲線と口座残高推移
(1)利益曲線
まずは利益曲線を示します。
AI手法を用いたこの投資戦略は、2016年2月22日より運用を開始しました。
ちょうどその直前の2016年1月~2月にチャイナショックが発生しており、
そのショックで私は1000万円の損失を出していました。
この手法はその損失をリカバリするための戦略として運用を開始したものです。
図1.AI投資手法の利益曲線
2017年9月の時点での累積利益はおよそ3000万円となります。
2019/2/7追記:2018年12月時点での累積利益はおよそ6500万円となります(下グラフ)。
上のグラフには、上下に2つの曲線が記載されています。
簡単に説明すると、
「上側の曲線がこのAI投資戦略の本来のパフォーマンスであり、実際に運用して得た利益は下側の曲線になった」
と考えてください。
下側の曲線が実際の取引利益です。
取引コストやマーケットインパクト(自己の取引が市場に与える影響)により、実際に運用する際には本来のパフォーマンスよりも劣化してしまうのです。
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(2)口座残高推移
次に口座残高推移を示しておきます。
いくら3000万円稼いだといっても、元金がいくらであるかで話が大きく変わります。
図2.口座残高推移
現在の口座残高1億のうち、およそ7000万が元金で3000万が運用利益です。
途中で増資(口座に追加入金)しているため計算しづらいのですが、
ここまでで実現した利回りはおおよそ1年半で50%程度と考えてください。
まずまずの利回りではないかと思います。
また、200万円以上のドローダウン(局所的な損失)を被ったことがないというのも、非常に優れた点であると考えています。
2.投資におけるAI手法
まず、投資におけるAI手法について説明しておきます。
投資向けのAIは、(1)投資判断支援、(2)取引執行支援、(3)投資指標抽出、(4)投資銘柄選定、の4つに分類されます。
私の使っているAIは、(4)投資銘柄選定するAIです。
この手法は、「個別アセットの騰落率なりそれに準ずるものを解答ラベルとした教師付き機械学習」です。
もう少し具体的に言うと、株式市場の市況や銘柄の騰落状況、財務情報などの入力データ(説明変数や特徴量と呼ばれます)を元に、その日の銘柄の値動きを予測するものです。
「朝起きたらその日に取引する銘柄がディスプレイに表示されている」と言いたいところですが、実際はそこまで自動化していないため、発注前にせっせとPCに計算させて取引する銘柄を算出します。
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3.私が使っているAI(機械学習)手法
私が使っているAI(機械学習)手法は、LASSO(ラッソ)と呼ばれる手法です。
以下、できるだけ定性的に分かりやすく説明します。
(1)LASSOとは何か
この手法は、「L1正則化を用いた線形回帰」です。
正則化とは、統計や機械学習において過学習を防ぎ汎化能力を高めるために使われるもので、モデルが複雑にならないよう罰則項を付与してモデルを推定する手法です。
正則化は、罰則項の与え方でいろいろな種類に分類されます。
L1正則化による線形回帰をLASSO回帰、L2正則化による線形回帰をRIDGE回帰と呼びます。
参考までに、LASSOとはLeast Absolute Shrinkage and Selection Operatorの略です。
(2) LASSOの特徴
この手法は、統計的手法と機械学習とが上手く融合した、非常に優れた手法であると思います。
LASSOの特徴は、上記でも述べたとおり「過学習を防ぎ汎化能力を高めること」ですが、もう1つ「変数選択」という優れた特徴を持ちます。
L1正則化を使用すると、モデルのいくつかのパラメータを0にすることができます。
例えば説明変数が10個ある場合、LASSOを使えばその中から自動的に有効なものを絞り込んでくれるのです。
どれだけ絞り込むかは、罰則項の掛け方を大きくしたり小さくしたりすることで調整できます。
(3)学術的・実践的な事例
LASSOを用いた投資モデル構築は、2012年頃から論文が見られるようになりました。
大元となった論文は、以下の論文であると思います。
この論文では、LASSOを使うことによってアウトオブサンプルの予測性能(ここでは決定係数)が大幅に向上することが示されています。
「Estimating High-Dimensional Time Series Model」(M. C. Medeiros, 2012年)
また、機械学習コンペを主催するKaggleのコンペティションにおいて、
ツーシグマの主催した「Financial Modelling Challenge」でも、上位に入った2チームがLASSO回帰の兄弟分であるRIDGE回帰をモデルに取り込んでいます。
(4)なぜLASSOなのか
当ブログではこれまでに、投資のモデルを構築するために最も注意を払うべきは「市場の変化」であることを強調してきました。
市場の変化にロバストなモデルを構築するために、複雑性を排除して変数選択するLASSOは、過分散なフィナンシャルデータとの相性が抜群なのです。
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いかがでしょうか。
AI(機械学習)で投資モデルを構築している方の参考となれば幸いです。