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(旧 システムトレードのススメ)

【書評】Principles-人生と仕事の原則-

PRINCIPLES(プリンシプルズ) 人生と仕事の原則

久しぶりにこちらのブログでの更新となります。

昨日、レイ・ダリオ氏のPrinciplesを読んだため、自分のための覚え書きとして印象に残ったセンテンスをピックアップしてご紹介したいと思います。

 

 

1.レイ・ダリオとは

レイ・ダリオ氏はブリッジウォーター・アソシエイツというヘッジファンドの創始者です。ブリッジウォーターは「ピュア・アルファ」と呼ばれる、ベータを排除した純粋な収益追求型のファンドを旗艦とする世界でトップクラスのヘッジファンドです。

 

少し古い記事ですが、米国のヘッジファンド運用資産ランキングで1位となっています。

アメリカの大手ヘッジファンド、トップ10 | BUSINESS INSIDER JAPAN

 

 

 

 2.Principles

レイ・ダリオ氏はブリッジウォーターを成功に導く過程である重要なことを学んだといいます。それは「人生とはいくつかの原則(Principles)に基づいてアプローチすべき」ということです。

Principlesは「人生」「仕事」「経済」「投資」の全四編から成ります。この本自体は3部構成であり、「私の生い立ち」「人生の原則」「仕事の原則」を収録しています。

なお、これらは英文PDFが無料でダウンロードできます(投資編は準備中のようです)。またレイ・ダリオ氏はPrinciplesのアプリも作成しており、そちらでも閲覧できるようです。

 

 

 

3.書評

今回はPrinciples-人生と仕事の原則-の第1部である「私の生い立ち」から印象に残ったセンテンスをピックアップします。

 

 

・最初に「経済と投資の原則」を書こうかと考えた。だが、「人生の原則」と「仕事の原則」から始めることにした。そのほうが一般的だからだ。

 

 これはその通りだと思います。人生や仕事は、投資の上での土台となるからです。順序が逆では説得力が薄れると思います。

 

 

・お金儲けを目的にするのは馬鹿げたことだ。本当に望むものは何か、それがあなたの真の目的だ。

 

お金というものは目的を達成するための手段であることが多いです。人生において、目的と手段を混同すると、間違った道を選ぶ危険が高くなると思います。

 

 

・意思決定をする上で重要なことは、意思決定に使う原則を考えること。言葉に書き出し、アルゴリズムに書き、可能であれば過去データを使って実証する。これをリアルタイムでも利用して、人間の頭で考える意思決定と並行して使ってみることだ。

 

レイ・ダリオ氏は主観的な判断でなく、客観的・理論的な根拠に基づいて投資を行ってきました。特に物事の事象を数式化(これをマシン化と呼んでいる)し、投資の意思決定に利用している様は以下のとおりです。

 

・(商品売買の意思決定において)どのくらいの家畜が飼育されているか、どのくらいの穀物を餌として食べるのか、どのくらい早く体重が増加するかがわかれば、いつどのくらいの量の食肉が市場に出回るか予測できる。餌となるコーンと大豆がいつどの程度消費されるかもわかる。(中略)全て論理的な因果関係にあるきれいなマシンのように見える。

 

 

・私が使った価格決定のアプローチは、大学の授業で学んだものとは異なっていた。(中略)他の人が見逃した経済と市場の動きを見つけることができたのは、この異なるアプローチのおかげだ。

 

トレードとは単純に値動きを追うのでなく、その背景にある諸所の事情や構造を理解することが重要だと思います。そしてそのアプローチに独自性があれば、隠れたアルファの発見に至るのでしょう。

 

 

・マーケットでポジションをとると、私は意思決定に使った基準を書き留めておくようにした。そうすればこの基準がうまく機能したかどうかを振り返って考えることができる。

 

これは至極当然のことなのですが、実践できている方は少ないと思います。システムトレーディングでは振り返りが比較的容易ですが、裁量であれば極端に難しいと思います。

 

 

・あるとき、お金が底をつき、社員に給料を払うお金がなくなった。1人ひとり辞めてもらうしかなかった。ブリッジウォーターの社員はただ一人になった。私だけ。(中略)妻と幼い二人の子供を養わなくてはならない。私は人生の大きな転機に直面した。

 

レイ・ダリオ氏ほどの人でもやはり不遇な時期は存在したようです。大切なことは、それをどう乗り越えていくかだと思います。

 

 

・もちろん間違えることはあった。よかったのは間違うとそれを学習し改善する機会だとみる癖がついた点だ。問題をつねに追跡し注意していたから、私たちの取引執行能力はつねに改善していった。

 

どんなに注意しても間違いは必ず発生します。そのため、間違いが発生した時点で真摯な態度で要因の分析と再発防止の検討を行う必要があります。これらが自然とできる仕組みを作ることが成功のための第一歩です。

 

 

・私のいなくなった後もブリッジウォーターが成功するように準備する。(中略)重要な決断は全て私が行ってきた。だが、その決定はいつか誰か他の人の手に渡る。

 

これは個人の方は少し同調しづらいのかもしれません。私はhohetoと一緒に資産運用を行っているので、万が一私がいなくなったときにhohetoが速やかに引き継ぎできるようマニュアルを準備しています。

 

 

・(中略)経営システムが投資システムのように自動化されるのはまだ先のことだが、そのためのツールは信じがたいほどの違いをもたらした。(中略)この究極の目的は、私の大事な人たちが私抜きでさらなる成功を収めるようにすることだ。

 

本編でもいやというほど出てきますが、組織運営を円滑に進めるためのツールの整備、これに非常に注力しています。私も重要なことは投資戦略よりもプロセス管理だと考えています。

 

 

・私自身が成功したいという欲望は、他人の成功を手助けしたいという欲望に取って代わられ、今それに私は奮闘している。(中略)知識を引き継ぐことはDNAを引き継ぐことだと思う。それは個人よりも重要なことだ。個人の命を超えて生き続けるからだ。

 

これがPrinciplesを著し無料で公開している理由です。私もこういう考えは理解できるようになってきました。

 

 

レイ・ダリオ氏の投資や運営に関する考えはシステムを基盤としており、この観点からシステムトレーダーの方にはお勧めできる一冊です。

残りの「経済と投資の原則」が待ち遠しいです。英文も見てもよいのですが、手に取っては繰り返し見ることのできる邦訳本を机のそばに備えておきたいのです。