本日はノーベル経済学賞受賞者の話です。
とは言っても単純につらつらと説明するわけではなく、
「投資理論に貢献した」と考えられる受賞者をランキング形式で紹介していきます。
そもそもノーベル経済学賞とは、「純粋なノーベル賞」ではありません。
「純粋なノーベル賞」とは、物理学賞、化学賞、生理学医学賞、文学賞、平和賞の5つの賞です。
これらはダイナマイトの発明で一財を築いたアルフレッド・ノーベルの遺言に従って1901年から始まったもので、その賞金はおよそ1億円でありノーベル財団の運用する利益で賄われています。
これに対してノーベル経済学賞とは、1968年にスウェーデン国立銀行がノーベル財団に働きかけて設立した「後付け」の賞です。
当然ながら賞金もノーベル財団でなくスウェーデン国立銀行が支払います。
経済学賞をノーベル賞として扱うかどうかは賛否両論があり、ノーベルの子孫はこれを認めていないようです。
なお、日本人でノーベル経済学賞を受賞した人はこれまでにいません。
少し説明が長くなってしまいましたが、
それでは「投資理論に貢献した」と考えられる受賞者をベスト7で発表していきます。
ランク付けは私の独断と偏見で行いました。
私の投資スタイルを反映した個人的嗜好が多分に含まれていますので参考として考えてください。
またノーベル賞受賞の功績と下記で紹介する業績は必ずしも一致しませんのであしからず。
第7位
ジョセフ・スティグリッツ
「情報の非対称性を伴った市場分析」 2001年
投資を行う上で「情報の非対称性」というものは常に頭の片隅に置いておかねばなりません。
「情報の非対称性」はすなわち「非効率市場」を生み出し、「収益機会」へと繋がるからです。
スティグリッツの研究が投資に直接応用できるか否かはさておいて、ストラテジーの根幹には必ずこのような考え方がなければなりません。
このため、7位にランクインさせました。
第6位
クライヴ・グレンジャー
「時系列分析手法の確立」 2003年
時系列分析で有名な人です。グレンジャー因果を提唱しました。
グレンジャー因果とは、通常の因果関係(Xが原因でYとなる)ではなく予測可能性(Xを使えばYを予測できる)を意味します。
VARなどの計量時系列分析では、必ず紹介されているメジャーな手法です。
第5位
ジェームズ・トービン
「金融市場とその支出決定・雇用・生産物・価格との関連性の分析」 1981年
トービンがノーベル経済学賞を受賞したとき、各新聞社は「『卵を全部一つの籠に入れるな』でノーベル賞受賞」と報道したそうです。
「トービンの分離定理」が有名です。
ポートフォリオの構築とリスク資産と無リスク資産への配分は独立して決定される、というものです。
なお、私はリスク資産オンリーですので分離定理は不要です。
第4位
ロバート・マンデル
「さまざまな通貨体制における金融・財政政策と最適通貨圏の分析」 1999年
「マンデル・フレミングモデル」が有名です。
このモデルはマクロ経済のモデルであり、株価の上昇や為替相場とも密接な繋がりを持ちます。
マクロ経済のモデルとは様々な前提条件を固定した理想的なモデルであり、
それゆえに批判が後を絶ちませんが、知っておいて損はないモデルの1つです。
よろしければこちらの記事もどうぞ。
第3位
ウィリアム・シャープ
「資産形成の安全性を高めるための一般理論形成」 1990年
言わずと知れた「CAPM(資本資産価格モデル)」ですね。
要するにマーケットベータを提唱したわけです。
CAPMは現代ポートフォリオ理論の最大の理論的成果と言われています。
クオンツに従事している人でこのモデルを使っていない人はいないのではないでしょうか。
ハリー・マーコヴィッツのポートフォリオ理論が元となっていますが、それをベータで表現したこのモデルは素晴らしいの一言です。
第2位
ユージン・ファーマ
「資産価格の実証分析に関する功績」 2013年
「ファーマ・フレンチの3ファクターモデル」はあまりにも有名です。
それまでマーケットの影響しか考慮していなかったCAPMに、はじめてリスクファクターの概念を織り込んだのです。
(実務的にはローゼンバーグのほうが早いかもしれませんが)
このモデルにも含まれるサイズ効果が現在でも有効であることは、前回のコラムでも紹介したとおりです。
第1位
ダニエル・カーネマン
「行動経済学と実験経済学という新研究分野の開拓への貢献」 2002年
「プロスペクト理論」に敵うものなし。
経済学というものは物理学のように絶対的な法則に支配されるものではなく、人間の心理という極めて変わり易いものに支配されているのです。
このことが分かっていない研究者が多すぎます。
「金融緩和すれば物価が上がる」と盲目的に信じているような人達です。
最も重要なものは「人間の心」です。投資でもこれを忘れてはいけません。
番外
マイロン・ショールズ、ロバート・マートン(笑)
「ブラック-ショールズ方程式の開発と理論的証明」 1997年
ブラック・ショールズ方程式というオプションの理論価格を算出する式を考案しました。
彼らの功績は現代金融工学の先駆けになったとも言われています。
通常であれば当然上位にランクインすべきなのですが、LTCMでやらかしてしまったため番外にしておきました。
あくまで個人的見解ですので賛否は受け付けません(笑)
興味のある方には以下の書籍をお勧めします。
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