直近の6~8月の3か月のリターンは、合計で約1400万円になりました。
もともとの元金が約8000万円だったので、3か月利回り(税引き前)は約17.5%。単利運用と仮定して年利に換算すると70%になります。
株式投資に期待する利回りは7~8%程度でしょうから、一般論で語るなら、この結果は出来過ぎとも言えるでしょう。
プロフィールで紹介している通り、僕たちは投資対象として「日本株のシステムトレード」を採用しています。
このエントリーでは、なぜシステムトレードを採用しているのか、また、「投資対象としてのシステムトレード」はどのような利点があるのかを述べたいと思います。
■システムトレードとは
システムトレードとは、「あるルールに基づいて機械的に売買を行う」スタイルを指します。
ルールは多種多様ですが、例えば以下のようなものです。
- 3日連続で値上がりしている銘柄の中から、時価総額の大きな順に10銘柄を買う(典型的な順張りルール)
- 前日の騰落率がトップ10の銘柄を売り、ワースト10の銘柄を買う(典型的な逆張りルール)
- NY市場が上がったら、TOPIX連動型ETFを買う。逆に、下がったらTOPIX連動型ETFを売る(市場相関に基づくルール)
重要なのは、「人間的な判断を行わず、機械的に売買を行う」ことです。
逆に、知識や経験、ときには勘を頼りに、人間の判断で売買を行うスタイルのことを、「裁量トレード」と呼びます。システムトレードの中に裁量を持ち込んで、事前に決めたルールを捻じ曲げることは禁忌とされています。
システムトレードには「バックテスト」という概念があり、
過去の値動きに対してルールを適用したときに、どれだけ利益が上がったのかをシミュレーションすることが可能です。
システムトレードについての詳細は、次回以降のエントリーで紹介していきます。
しばしば、「トレーディングは投資ではなく投機である」と揶揄されますが、実際にシステムトレードは「投資対象」たり得るのでしょうか。
これを語るには、投資本来の意味を掘り下げる必要があります。
■投資とは何か?
投資を言葉通りに捉えると、「資本を投下すること」です。ここでいう資本とは、「人的資本」や「資金」だったりします。
そして投資の目的は、リターンを得ることです。リターンは、一般的には金銭的な利益になります。
このように定義すると、あなたが会社員だとしたら、会社に勤めることも一種の投資と考えることができます。
あなたという人的資本を投下して、月々決められたリターン、つまり給料を得る、ということですね。
■投資の対象とは何か?
続いて、投資の対象とは何であるかを考えてみましょう。
投資対象という言葉を聞いてすぐに思いつくものはたくさんあります。
株式、債権、投資信託、不動産・・・変わったところでは和牛やワインだったり、アイドルだったりします。
ここで、「投資対象とは株式や不動産である」と認識しがちなのですが、これは誤りです。
正しく言い換えると、「株式を購入してキャピタルゲインを得ること」や、「不動産を購入して賃貸収入を得ること」が投資の対象であり、
つまり、投資の対象とは「戦略」なのです。
戦略とは、目的(=リターンを得ること)をどうやって達成していくか?の具体的な指針であり、
「株式投資をしている」ということは、リターンを得るために「株式を購入してキャピタルゲインを得る」という戦略を採用し、資金を投下している、ということになります。
もちろん、人によってはリターンを得るために「株式を購入して配当利回りを得る」という戦略を採用しているかもしれませんし、「優待を受け取る」という戦略を採用しているかもしれません。
会社員の話に戻してみましょう。
会社勤めは一種の投資である、という話をしましたが、「投資対象としての会社勤め」を考察すると、
リターン(=給与所得)を得るために、「会社という組織に所属し、仕事を行って対価を得る」という戦略を採用し、自分という人的資本を投下していることになります。
リターンを得るためには別に会社員でなくとも構いません。
八百屋さんや魚屋さんを経営してもいいのですが、多くの人はその戦略を採用しません。
なぜ多くの人が、会社勤めの戦略を採用しているのでしょうか?
それは、リスクが少ないからに他なりません。
リスクが少ない、とは、投資の世界ではボラティリティが低いということを意味します。
つまり、この戦略の中で多少風邪をひいて休もうが、仕事でヘマをしようが、もらえるものはほぼ確実にもらえるということであり、
これが「結果の予測のしやすさ」につながっています。
「結果を予測しやすい」ということは、戦略を選択する上で非常に大切な要素なのです。
■リスクとリターン(=利回り)の関係
話を一般の投資対象に戻します。
「結果の予測のしやすさ」という観点でさまざまな投資対象を見たとき、一般的には「結果を予測しやすいほうが利回りが低くなる」という関係が成り立ちます。
- 「大企業の債権を購入し利息を得る」
- 「ワンルームマンションを購入し賃貸収入を得る」
- 「株式を購入し値上がりに期待する」
上記の例では、上に行くほど1年後に得ることのできるリターンの予測がしやすくなり、代わりに利回りが低くなる傾向にあります。
ちなみに昨年発行されたトヨタの10年債の利回りは0.09%です。新築マンションの利回りは概ね3~5%程度ですね。
では、結果を予測しやすく、かつ利回りが高い投資対象はないのでしょうか?
この問いへの解の一つとして、僕たちはシステムトレードにたどり着きました。
■システムトレードでは、どのようにして結果を予測するか
システムトレードが拠り所としているのは、「統計的な有意性」と「大数の法則」です。
先に述べたように、システムトレードでは「バックテスト」を行うことで、実際に過去の値動きにルールを適用したときに、どれだけリターンを得られるか、平均利回りがどの程度か、ボラティリティはどの程度あるのか、を検証します。
検証の結果、そのルールの性能が以下のような形ではっきり分かるようになります。
- 期待リターン
- ボラティリティ(リスク)
- ドローダウン(負けに負けたとき、資金の何%が失われるか)
例えば、サイコロを100回振った際、何%の確率で、偶数の出る回数が45~55回の間に収まると思いますか?
パッと答えることはできなくても、何となく「統計学的な回答ができるだろう」と理解できるはずです。
同じように、システムトレードでは〇%の確率で、リターンが〇%~〇%の間に収まるだろうと予測することができます。
期待リターンの高いルールでも、この変動幅が大きければ、性能は低いとみなされます。
この性能評価には、シャープレシオ(リスク調整済みリターン)などが用いられます。
こうして得た高性能なルールを利用してトレードを行うのですが、当然、ボラティリティに応じてトレード結果にバラツキが出てきます。
ここで、トレード回数(試行回数)が多ければ多いほど、結果のバラツキはならされ、リターンはシステム本来の性能に収束していくと考えられます(いわゆる大数の法則)。
ですから、よいルールの条件として、「試行回数を増やせること」が挙げられます。
例えば 「暴落時に買い増す」というルールは、歴史がその効果を証明していますが、10年に1回しか起こらないほどの暴落をルールに取り入れてしまうと、試行回数が増えず、大数の法則が成り立ちません。
■システムトレードに期待する利回りについて
そして肝心の利回りについては、冒頭に述べた通りです。
僕たちは年間利回りの目標値を50%に定めていますが、そこまで利回りを求めないのであれば、比較的単純な(≒ロバストな)ルールを用いて10~20%程度の利回りを出すことは、十分可能だと思われます。
例えば、「前日の騰落率がトップ10の銘柄を売り、ワースト10の銘柄を買う」というルールで毎日売買したとすると、直近5年平均の利回りはどうなると思いますか?
A)5% B)10% C)20%
これは、別のエントリーでukiに考察してもらうことにしましょう。
他にも、どのようなルールでどの程度の利回りが出るのか、ブログ上で検証していこうと思います。
上記の事柄から、
「システムトレードは投資対象として、つまりリターンを得るための戦略として、十二分に魅力的である」
「むしろ、これ以上に結果を予測する手法が整っており、かつ利回りを見込めるような魅力的な投資対象は存在しない」
という結論に至り、ここ数年、こつこつとシステム作りを進めてきました。
もちろん、それぞれの保有スキルや資本(使える時間と資金)を考慮する必要がありますので、万人にとって最適だよ、と言っているわけではありませんし、僕たちにとっても、いずれは別の運用方法に移るときが来るでしょう。
■逆に、なぜ大勢の投資家たちがシステムトレードを行わないのか?
このようなメリットを享受できるシステムトレードですが、実際に資産形成の手法としてシステムトレードを採用している方は、ごく少数のようです。
その理由についても考察してみます。
1)統計学やプログラミングを扱える必要がある
ルールの検証を行うために、統計学の知識とプログラミングが不可欠です。
これらは、実際は高度な技術は一切必要なく、大学生くらいでも習得できる内容なのですが、なかなかハードルが高いようです。
多くの投資家たちは、お金の扱いには詳しくても、統計学やプログラミングについては守備範囲外なのでしょう。
2)時間がない、面倒くさい
そんなに時間とれないから、インデックスファンドを買ってほったらかしておくほうがマシだよ ということですね。
3)資金が大きすぎるか小さすぎる
システムトレードのリターンを安定させる(=予測に近い結果を得る)ためには、再現性と試行回数が重要になります。
もしも資金が大きくなりすぎると、出来高制限でルール通りに売買できない場合がありますし、逆に資金が小さすぎると、取引数を稼げずリターンのバラツキが大きくなってしまいます。
運用規模としては、数千万円~数億円が現実的な範囲となるでしょう。
4)トレーディングが投資対象たり得ると思っていない
トレーディングに対するイメージが悪かったり、実体のないものを投資対象として認めない、という意見です。
株式や不動産は実体が存在しますが、トレーディングは「ルール」です。
この不動産を購入すると期待利回りが〇%ですよ、空室リスクや修繕リスクがありますよ、という話は具体的で分かりやすいのですが、
このルールを元に取引すると期待利回りが〇%でボラティリティ(=リスク)が〇%ですよ、という話を聞いても、詐欺のように感じてしまうのかもしれません。
■終わりに
システムトレードの一番のメリットは、そのルールの持つ特性をしっかりと把握できるところにあります。
もしも、「95%の確率で年利10~20%を達成でき、かつ、損失が一番積みあがったときでも、99%の確率で資金の10%以上を失わない」と事前に理解しているのであれば、全財産をつぎ込むことすら可能です。(ですよね?)
このように、投資対象を理解することは、集中投資を可能にするのです。事実、僕たちは資金の100%を投入しています。「全力でいく」というやつですね。
バフェットは、分散投資を「無知に対するヘッジ」であると切り捨てました。
上がるか下がるか分からないから、分散するしかないのです。逆に、上がると分かり切っているなら、一番上がりそうな対象に集中的に投資すればいいだけです。
ビジネスの世界でも投資の世界でもそうですが、突き抜けた結果を出すためには「力を一点に集中する」ことが一番効率がよいのです。
一方、資産形成を行うためには「資金を失わないことが最も重要」という意見もあります。分散投資は、そのための優れた手法で、いわば守りに強いのです。
集中投資と分散投資で、どちらがより優れているか、ではなく、当人の置かれている状況により、使い分けるのが正しいと思います。
それでは次回のエントリーをお楽しみに。
P.S.システムトレードについて体系的に知りたい方は、まずはこのあたりの本を読むのがよいでしょう。