小型株効果とは、時価総額が小さい銘柄のほうが時価総額が大きい銘柄よりも株価が上げる傾向にある、というものです。
なぜそうなるか、正しい説明はできません。
定性的に「小型株のほうが大型株よりも成長性がある」と言われたり、
理論的に「倒産リスクが大きいためプレミアムが付く」と言われたりします。
最初にこの効果を体系立って説明したのは、1992年のファーマ・フレンチモデルだと思います。
このモデルでは、個別銘柄の超過収益はマーケットベータ、時価総額、PBRの3つのファクターで説明されます。
今回は、小型株効果を使った簡単な中長期投資法を紹介します。
◆どのような投資手法か?
(1)対象銘柄
小型株をロング、大型株をショートするロングショートポートフォリオを作ります。
十分な流動性を持ち、その殆どが空売りできるTOPIX500から銘柄を選定します。
(2)選定指標
大型か小型かを判定する指標は、一般的には時価総額が使われますが、
売上高や総資産、自己資本などの指標でも構いません。
どの指標でも同じようなパフォーマンスとなりますが、指標によっては資産曲線が若干キレイになるものがあります。
(3)ポートフォリオ
TOPIX500銘柄のうち、(2)の指標の下位20銘柄をロング、上位20銘柄をショートするポートフォリオを作ります。
ポートフォリオを構成する銘柄は計40銘柄となります。
計40銘柄が多いというのであれば、その半分の計20銘柄でも構いません。
ただし、ポートフォリオの安定性がわずかですが劣化してしまいます。
(4)リバランス
月初の寄付でポートフォリオを作り、月末の引けで全て決済します。
このとき、各銘柄の指標を再計算してランキングを作り直し、
翌営業日(すなわち月初)の寄付に再びポートフォリオを作ります。
この操作を繰り返します。
さて、ではどうなるか結果を見てみましょう。
◆どのくらいの利回りになるか?
グラフ1.累積損益曲線[%]
結果として、2010年からの累積リターンは75.2%であり、平均利回りは9.8%です。
株式の配当利回りは一般的に2%~4%であることを考えると、この投資手法の利回りは十分満足のいくものだと思います。
ただし、この曲線は手数料や金利、配当、税金を考慮していませんので注意してください。
なお単利相当の資産曲線であり、リバランスの際に利益を再投資することは行っていません。
◆市場インデックスと比較してどうか?
グラフ2.市場インデックスとの比較
2010年から2017年8月末までの結果を比較すると、
「インデックスのリターンを上回ることが出来ていない」というのが分かります。
インデックスのリターンを上回ることがいかに難しいかよく分かります。
この期間は各国の金融緩和の真っ只中であるため、仕方がないのかもしれません。
ただし、月々のリターンのシャープレシオは以下の通りです。
本手法:0.328、TOPIX:0.137、S&P500:0.276
このようにシャープレシオはインデックスを上回ることが出来ていることが分かります。
◆メリット・デメリットを整理してみる
(1)メリット
・ロングショートポートフォリオは売買代金がニュートラルになっているため、市場の暴落を受けにくくなります。
TOPIXに対して安定性が高いのは、シャープレシオから見ても明らかです。
・このアノマリーは誰しも知っているメジャーなものですが、最近でもその効果が消失していません。
一般的な投信と比較すると、非常にロバストな手法であると言えます。
・自らポートフォリオ選定とリバランスを行うため、投信などに支払う信託報酬が不要です。
(2)デメリット
・やはり運用コストが掛かることです。
まず、リバランス時に取引手数料が発生します。
続いて、ショートポジションは信用取引でなければならないため、信用金利(貸株料)も発生します。
さらにリバランス時に損益を確定させるため、年次毎に税金を払う必要があります。
・ロングショートポートフォリオなので配当が相殺しあって殆ど貰えないこともデメリットとして挙げられます。
いかがでしょうか。
比較的大きな運用資産を安定して運用したい人、投信に任せず自らでポートフォリオを管理したい人にお勧めの手法です。
実は、小型株効果の他にも使えるアノマリーが存在します。
こちらは別途記事にしていく予定です。