こんにちは。hohetoです。
以前、システムトレードにおいて、単純なルールでも年間10~20%の利回りを出すことが可能であろう、という話をしました。
以下、抜粋です。
例えば、「前日の騰落率がトップ10の銘柄を売り、ワースト10の銘柄を買う」というルールで毎日売買したとすると、直近5年平均の利回りはどうなると思いますか?
A)5% B)10% C)20%
このルールは、「株価は反発するであろう」という予測を元にした、典型的な逆張り手法です。
このように、一部を買い(ロングし)、一部を売る(ショートする)という売買手法は、「株式ロングショート」などと呼ばれ、ヘッジファンドでもよく用いられる手法です。
このようにして余計な市場全体の上げ下げを打ち消すわけですね。
このルールについて、ukiが実際に検証してくれたので、結果を見てみましょう。
1. 前提条件
売買する銘柄はTOPIX500から選びます。その理由は以下です。
- 十分な流動性を持っていること
- ほとんどが空売りできる貸借銘柄であること
- 小型株と比べボラティリティが安定しており、滅多に取引規制が掛からないこと
上記で述べたようなロングショートの手法は、このように比較的大型な銘柄に適した手法なのですね。
2. 結果
TOPIX500銘柄について、前日騰落率でランキングを作ります。
前日比の騰落率の最も低い10銘柄をロング(買い建て)し、最も高い10銘柄をショート(売り建て)します。
以下、2010年から運用した際のシミュレーション結果です。
図1. このルールで運用したときの資産曲線のシミュレーション結果
はい、全然ダメでした笑
利回りは、マイナス11.5%です。最初に1000万円を運用したとすると、7年後には320万円まで資金が減ってしまいました。
単純にロングとショートを入れ替えて、下がったものを売り、上がったものを買えば(つまり逆張りでなく順張りにすれば)、利回りをプラス転換できることになります。
なぜこのような事象が起こったのでしょうか?その原因を考えていきます。
ここからが、この記事の重要なところです。
3. 「10分位ポートフォリオ」で観察する
上記のルールでは、騰落率のトップ10とワースト10を売買対象としていました。
これらの騰落率の激しい銘柄について「翌日反発するだろう」という予測を立てたわけですが、この予測が間違っていたわけです。
具体的に、以下の方法で検証してみましょう。
前日の騰落率のランキングについて、トップからワーストまでを10のグループ(=ポートフォリオ)に分けて考えます。1グループあたりの銘柄数は、およそ50となります。
そして、騰落率の最も高いグループをP1、最も低いグループをP10とします。
2010年から現在まで毎日、それぞれのグループを単純に買い建てした場合のリターンの期待値をグラフにします。
このような考え方を「10分位ポートフォリオを観察する」と言います。個別ではなく、グルーピングすることで全体の傾向を観察するための手法です。
図2. 騰落率グループごとのリターンの期待値
(←騰落率が高い 騰落率が低い→)
前日上がった銘柄を買えばマイナスになり(売ればプラスになり)、前日下がった銘柄を買えばプラスになる、という傾向が見て取れますね。
そして、もう一つ分かったことがあります。
それは、きれいな右肩上がりのグラフになっているわけではなく、最も端のポートフォリオ(P1とP10)は傾向が薄れているということです。
そこで次は、騰落率の高いP1とP2、騰落率の低いP9とP10を、さらに5分割ずつして、もっと詳細に観察します。
図3. 細分化した騰落率グループごとのリターンの期待値
(←騰落率が高い 騰落率が低い→)
なんと、最も端のポートフォリオだけ特性が逆転していました。僕の当初の目論見は、完全に外れたというか、むしろ真逆だったことが分かります。
検証の結果、以下のような特性がわかりました。
- TOPIX500は、基本的には騰落率に対して反発する特性がある。
- ただし、最も騰落率の激しい極端な値動きをしている銘柄は、前日の値動きを継続する特性がある。
確かに、何らかの原因でストップ高やストップ安になっている銘柄は、翌日も続伸あるいは続落を繰り返すようなイメージはありますね。
もちろん、このような銘柄はボラティリティが激しく値動きが予測しづらいため、単純に上がったら買う、下がったら売る、では資産曲線は安定しません。
それは、図1.のグラフがガタガタになっていることからも明らかです。
次の記事では、上記のような特性を活かして、利回りがプラスになるようなルールを考えていきたいと思います!
(続く)