「金融庁:超高速取引の規制強化を検討、業者を登録制へ-欧米も参考に」
ずいぶん久しぶりの更新になってしまいました。上記は10月19日付けのブルームバーグの記事となります。今年に入ってから金融庁がHFTの規制に乗り出すと囁かれていましたが、ようやく本格的な議論に入るようです。記事の内容からすると早ければ来年初の国会で法令が可決され、施行タイミングとしてはおそらく再来年になると考えられます。
記事中に”東証での全取引のうち超高速取引が発注件数で7割、約定件数で4~5割を占める”とありますが、以前から述べているように収益機会を求めるHFTと単なる取引執行アルゴリズムは分けて考える必要があります。日本市場には収益機会を求めるマーケットメイク型HFTは殆ど存在しないため、規制対象となる超高速取引とは、その殆どが取引執行アルゴリズムとなってしまいます。
具体的な規制内容として考えられるものは、
・金融庁への登録制(登録料が発生する場合があります)
・全取引所(≒東証)へのシステム対応の義務化(単位時間当たりの注文数量の制限や短時間(1秒以下など)でのキャンセル注文の禁止など)
・高速注文への課税
などがあり、当然ながら下の項目ほど厳しいものになります。
これは取引業者(証券会社や投資銀行)と取引所(東証)からすると、たまったものではありません。取引業者からすると、執行時間の延長に伴ってベンチマークからの乖離幅が拡大するリスクが増加し、総じて執行コストが増える要因となります。取引所からすると、注文数量の減少に伴って取引手数料(取引参加料金)での売上が落ちてしまいます。東証はアクセス数に応じて手数料を徴収しており、キャンセル注文もその対象となっています。その反面、アルゴリズムによる見せ玉は減少すると考えられ、個人投資家には幾分メリットがあると言えます。
しかし結果としてこれを理由に東証が手数料増加に踏み切った場合、それらは証券会社を通して個人投資家に転嫁されるため、何とも言えないところです。
ではこれらの規制により市場の安定性が保たれるかと言われると、それは疑問が残ります。なぜならショックの発生時には、人間は我先にと逃げ出すからです。そんなときに注文の執行時間に制約を設けられていると、なおさらその心理は加速されます。年初に中国がサーキットブレイカーを導入したことでパニックが加速したことを忘れてはいけません。
有識者会議では各方面からの大反対にあうことが予想され、結局のところ登録制だけというところに落ち着く可能性が高いと考えられます。