この記事を読んで。
僕は日頃から副業を強く推奨しており、
僕の会社に勤める若い社員たちにも、副業は必ずするべきだと伝えている。
もっとも、実際に副業に手を出す社員は少ないのだが。
元記事の筆者は、会社勤めをしながら副業としてブログの運営を続け、
ついにブログ経由で十分な収入を得ることに成功し、先日本業だった会社を辞めたそうだ。
なんたるサクセスストーリー。
若干26歳にしてセミリタイヤ状態となった彼は、「好きなことして生きていく」と宣言し、実際に自由気ままに過ごしている。
そんな彼も、国民の義務からは逃れられない。そう、税金である。
■所得税・住民税・事業税を合わせて300万円近く
筆者の話を参考に、本業の給与所得と副業の事業所得を合わせ、各種税金の総額が約300万円になるようなモデルケースを作ると、以下のようになる。
- 一人暮らし・扶養なし・20代
- サラリーマンとしての年収が300万円(月収20万円+賞与30万円×年2回)
- 副業の事業所得(収益から計上した経費を引いた額とする)が、850万円
まずは本業のみの場合
年収300万円とすると、社会保険料が年間で約34万円。
家庭を持たない若者には、所得控除はほとんど認められないので、基礎控除38万円と給与所得控除108万円、社会保険料控除34万円のみを控除すると、課税所得が120万円となる。
すると、所得税は6万円となる。そして住民税は課税所得の10%で計算すると、12万円。これが一般的な会社員のモデルケースだ。
合計の税額は18万円となった。
見てわかる通り、このくらいの所得だと、所得税より住民税のほうが厄介だ。
続いて副業を合わせた場合
ここに、ブログからの事業所得(収益ー計上した経費)が年間で850万円あったとすると、課税所得は970万円に跳ね上がる。
所得税は、なんと約167万円。住民税は97万円。
そして個人事業税は、課税所得から290万円の事業主控除を引いて5%をかけると、34万円。
合計の税額は、298万円となった。
所得税もエグいが、住民税もなかなかのものである。
筆者が現時点でどの程度の経費を計上しているかは分からないが、 おそらく副業の収益としては、年間900~1,000万円程度ではないかと推測される。
26歳で給与所得以外でこれだけの収入があれば、会社を辞めるという選択肢は当然出てくるだろう。
副収入という後ろ盾を得て、彼は仕事というしがらみから解放されたのだ。
■会社を辞めたとしたら、いくら税金がかかるのか
本業の給与所得がなくなったとすると、事業所得だけになる。
事業所得の850万円に対し、基礎控除の38万円と国保の約69万円(給与所得より事業所得のほうが大きいので、保険料負担が大きくなる。本ケースだと、社会保険を任意継続しても大体同じくらいの負担となる)を控除すると、課税所得は743万円。
計算すると、以下のようになる。
所得税約107万円、住民税約74万円、個人事業税約23万円、合計約204万円。
(住民税は前年の所得に応じて課税されるが、便宜上、当年の所得に関わる税金としてここに表記している)
まだまだ高いように感じる。なにせ、会社の同期たちは18万円しか払っていないのだ。
■作戦を考えよう
やるべきことはただ一つ。「税金を減らす」だけである。
その第一歩としては、まずは「お金の勉強をする」ということになる。
副業にはいろいろあるが、彼の副業であるブログには、事業化しやすい(個人事業として認定されやすい、という意味)という最大のメリットがある。
事業化すると、経費計上の幅が広がる・いくつかの強力な所得控除を受けれる、など、節税の幅が格段に広がってくる。
事業化できない副業(アルバイトなど)ではこうはいかない。
冒頭の記事では、「税金があまりにも高すぎる」とあるが、
これはそのまま裏を返して、節税によって圧縮できる余地が大きいということになる。
人生において、所得がぐーんと上がってくる20代後半~30代前半の時期に、税金と社会保険料について勉強することは、たいへん費用対効果の高い投資である。
税金について理解することは、効率よく豊かになるためには必要不可欠なのだ。
さて、先ほどの所得税・住民税・個人事業税の計算式を見てみると、それらすべては「課税所得」に関連していることが分かる。
- 所得税=課税所得×税率ー控除額
- 住民税=課税所得×10%
- 個人事業税=(課税所得ー事業主控除)×5%
そして課税所得は、以下の計算式となる。
- サラリーマンの場合・・・課税所得=年収ー給与所得控除ー各種控除
- 個人事業主の場合 ・・・課税所得=収益ー経費ー各種控除
収益は変わらないのだから、結局、控除を増やすか、経費を計上するかしかないことが分かる。
もう一つ重要な方法として「所得を分散する」ということが挙げられるが、これは上記のどちらかに含まれる。
それぞれ、具体的にやるべきことを見てみよう。
■控除を増やす
個人事業主は、サラリーマンと違い、強力な2つの控除を利用できる(もう使っているかもしれないが)。
青色申告特別控除
税務署で青色申告の手続きをしよう。これで65万円の控除を得ることができる。
これだけで、204万円の税金が、約180万円まで圧縮できる。
申告は多少面倒になるが、自分で十分対応できる範囲だろう。税金同様、経理や申告についても勉強しよう。時間はあるわけだし、知識をつけておいて損はない。
小規模企業共済等掛金控除
詳しくがググってほしいが、小規模企業共済は毎月最大7万円、年間84万円までを掛金として全額控除することができる。
もちろん、掛金にしてしまうと手元に現金がなくなるので、余裕がある分だけ利用しよう。
青色申告と合わせて84万円を控除に入れると、税金の総額は約151万円まで圧縮できた。
この控除で約29万円分の節税になっているのだが、これは84万円を使って年間で29万円を稼いだことと同じであり、ノーリスクで年利35%以上の利殖をしていることと同じだ(より厳密にいえば、すぐに解約せざるを得ない状況になる、というリスクは内包している)。お金に詳しい人ほど、必ず利用を検討している。なぜなら、こんな割のいい投資は他には存在しないと知っているからだ。
他にも、同居家族を扶養に入れたり、実家の両親に仕送りを送って扶養に入れて扶養控除を得る、くらいが、現実的にできる対策だろう。
1人扶養に入れると、扶養控除は38万円なので、さらに15万円くらいは圧縮できる。ただし、国保との兼ねあいがあるのでそこは要注意だ(国保は人数分の負担が必要)。
■経費を計上する
続いて経費について。以下を全て検討しよう。
- 家賃の半額を、事務所代とし、地代家賃として計上できないか?
- 水道光熱費の半額を、事業上の水道光熱費として計上できないか?
- インターネットの回線費用を、通信費として計上できないか?
- 携帯代を通信費として計上できないか?
- ブロガーやアフィリエイターとの飲食代を、会議費や接待交際費として計上できないか?
- 購入した書籍を、新聞図書費として計上できないか?
- パソコンを買い替えたとき、消耗品費として計上できないか?
- 日用品(ティッシュや洗剤など)や消耗品(電球など)を、消耗品費として計上できないか?
- 沖縄旅行を取材旅行とし、旅費交通費として計上できないか?ホテル代も同様。
- 常備薬などを、福利厚生費として計上できないか?
- 車やバイクなどの固定資産を、減価償却費として計上できないか?
基本、全部OKだ。正当だと主張できる範囲にとどめるのであれば。
なぜOKと言い切れるのか。それは、僕の担当税理士がOKだと言っていたからだ(苦笑いしながら)。
おそらく、上記で年間で200万円程度は計上できるだろう。控除と合わせると、税金の総額は約81万円まで圧縮できる。
■あとは消費税も考えに入れておく
売上が1000万円を超えてしまうと、課税事業者となるため消費税を懐に入れることができなくなる。
課税の仕方にも種類があるが、単純に800万円が課税対象として8%で計算すると、64万円を納める必要が出てくるので、デカイ。
法人成りをしたら、初年度は非課税事業者になれる可能性が高いので、このあたりの知識も身に着けておこう。
■将来を見据えるなら、いち早く法人化する
ある程度の事業所得があるのなら、個人的には早めに法人化することをお勧めしたい。
理由はいくつかあるが、個人に加えて法人格があるというのは、何かと便利なのだ。
まず、所得の分散がしやすくなる。
自分自身への給与と、法人へ残す利益のバランスを取ることで、サラリーマンでは絶対不可能な社会保険料のコントロールもできるようになるし、家族を従業員として雇い入れることもしやすくなる(個人事業主のときの専従者と比べて)。
継続的に事業収益を大きくするなら、上記のメリットが大きい。
それに、国保ではなく、社保を使えるようになるから、扶養家族が増えたときの負担も小さくなる。
個人の給与は控え目にしておき、大きな支出をなるべく法人側で賄うようにする(賃貸借契約を法人名義で行ったり、車などを法人名義にしたり)。
すると、子供ができたときに行政の手当を受けやすくなったり、保育料をぐっと抑えることができるようになる。もちろん、低く設定しすぎると賃貸借契約やローン、クレジットカードの審査に通りにくくなるので注意が必要だ。
株式会社は、20万円くらいで設立できる。合同会社ならもっと安いし、そこから株式会社に変更するなら設立費用を節約できる。
毎年法人住民税の均等割り(場所によるが、5~7万円とか)が発生するが、年間で1,000万円くらいの収益があるなら、必要経費のうちだろう。
代表取締役の肩書も持っておくべきだし、設立年数が経てば会社自体にも徐々に信用が付いてくる。お金も重要だが、世の中、信用も重要なのだ。
■豊かになる人は、なるべくしてなっている
僕が上記のような知識を身に着けたのは28歳前後のころだったと思う。
このエントリーに書かれていることを実行するかしないかは置いておいて、知識として備えているかどうかは非常に大きいように思う。
そして今現在思うことは、やはり豊かになる人は、豊かになるべくしてなっている、ということだ。
こちらのエントリーで「稼いでるおじさんたち、めっちゃ勉強してる」という一文が印象的だったがのだが、その通りだと思う。
お金に関する継続的な勉強が、彼らの年収や資産形成を支えているのだ。
逆に言うと、税金に関する本を1冊も読んでいない人が豊かになろうとするのは、それは普通に考えて無理があるだろう。
元記事で筆者は、「スキルには課税されない」と述べている。
まさしくその通りであり、彼の立場に置かれたときに一番最初に身に着けるべきスキルは、お金に関する知識であろう。
同様に「経費を学ぶ」という章の中で、「頼むぜ税理士~」と書かれているが、他人はあてにはできない。彼らが興味あるのは筆者がどれだけ節税できたかよりも、自分の顧問料の多寡なのだ。
税金については自ら積極的に勉強し、日常的に勉強するという習慣づくりの第一歩にするのがよいと思う。
最後に一つ本を紹介しておこう。本ケースで参考になるのが、橘玲氏の「貧乏はお金持ち」という本だ。
この章の一つに「サラリーマン法人フグタ」という章がある。これは、もしもマスオさんが給料を自分の給与所得としてではなく、自分の設立した法人の売上として計上したときの、税金と社会保険料の節約の仕方について書かれている。
この本は900円。これを読むことも、非常に割りの良い投資になるだろう。