これからの「お金」の話をしよう

(旧 システムトレードのススメ)

論文紹介(6)

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「Replicating Anomalies」(K.Hou, C.Xue, L.Zhang, 2017年5月)

 

本論文は、5月18日付けのWSJ記事「市場のアノマリー、実は大半が存在せず」で紹介された論文です。論文のタイトルを直訳すると、「アノマリーを再現する」となります。WSJ記事から引用すると、「市場の効率性を否定する事例の実証研究としては今年最大規模」であり、「学者らが発見した447のアノマリーを厳格な基準で検証したところ、その8割超は実存しないことが明らかになった」とのことです。

 

これだけを聞くと、「これまでの研究者が全くウソツキ」みたいに捉えられてしまいます。確かに検証方法が恣意的な論文も中には存在するのでしょうが、実際のところは、「その研究者が調査したときには確かに統計的有意性が存在したが、市場の効率化が進んでしまい、2017年までの通算期間で検証すると有意だと判定できなくなった」と言うのが正しいと思います。

では447のアノマリーうち、現在まで継続して有効な(収益性の高い)指標は何なのでしょうか?これは論文を読めば分かるのですが、答えだけを先に書いてしまいます。

 

TOP5の指標のうち4つを占めたのが「研究開発費(対時価総額比率)」です。これは前回紹介した「Stock Return Predictability in the Post-2008 Era」において、RD(Research & Development)項が08年以降も有効であるという内容と合致しています。なお、この指標を検証した元々の論文は以下の通りです。大変素晴らしい功績だと思います。

「The Stock Market Valuation of Research and Development Expenditures」

(L.Chan, J.Lakonishok, T.Sougiannis, 2001年12月)

 

この指標が日本市場でも有効かどうか、ここでは伏せておきます。あと10年ほど経ってこのファクターの有効性がどのように変化したか、もしもブログを続けていれば記事にしたいと思います。