「Stock Return Predictability in the Post-2008 Era」(K.Kim, J.Nofsinger, Z.Sun, 2015/8/15)
本論文(というかジャーナル)は、US市場における投資指標(ファンダメンタルファクター)のリターン予測力を調査したものです。ファンダメンタルファクターとは企業規模や成長性など、個別銘柄の特性や属性を表すファクターです。この論文では18のファクターについて、2008年の金融危機を境にそれぞれの持つ予測力がどう変わったのか、一覧として纏めてあります。
予測力の算出方法ですが、まずファーマ・フレンチモデルにより各銘柄のレジデュアルリターンを算出します。続いて各ファンダメンタルファクターについてユニバースを10分位し、最上位の分位(D10)と最下位の分位(D1)のヘッジポートフォリオのリターンを算出します。最後にこのリターンのt値を計算して予測力の代替とします。なお、計算期間はマンスリーでポートフォリオウェイトは均等加重としています。
以下が結果となります。
これを見ると、サイズ、B/P、モメンタムと言ったメジャーなファクターは、2008年以降にその予測力が極端に劣化していることが分かります。逆にCPX、RD、ADVなどのマイナーなファクターは予測力を維持しているようです。このような現象の背景としてQEやTARPなど米国の金融政策の影響ではないかと推測していますが、実のところはよく分からない、という曖昧な結論となっています。
これらの指標の詳細は、論文中に計算方法が記載されているのでご参考にして下さい。また、このようなファンダメンタルファクターに基づく中長期のロング・ショートに興味のある方は、以下の書籍もお勧めしておきます(kindle Unlimited対象です)。
「東大卒医師が教える科学的株投資術」 KAPPA 2006年