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(旧 システムトレードのススメ)

トランプ相場とレジーム判定

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「ヘッジファンドに思わぬ救世主出現-宿敵だったはずが」 -Bloomberg、12月9日

 

上記はトランプ相場とヘッジファンドのパフォーマンスに関するブルームバーグの記事です。同記事によると、最近の金融市場ではアセット間の相関が崩れているようです。記事の中では以下の4つのインデックス相関が低下していることが示されています。

(1) S&P500とMSCIエマージング指数

(2) 米10年債利回りとMSCIワールド指数

(3) Bloombergコモディティ指数とMSCIワールド指数

(4) S&P500とTOPIX 

このためアセット間でロングショート戦略を取っているヘッジファンドは、相関関係の低下に伴うスプレッドの拡大・縮小によりリターンが改善しているとのことです。リターンが改善しているのはロングショート系というよりもグローバルマクロ系ではないか?とも思いますが、実際のところはよく分かりません。もちろん裏目を引いたファンドもいる筈ですが、全体的にパフォーマンスが好転していることから統計的・クオンツ的に予測しやすい相場になっているのでは、とも考えられます。

さらに同記事では相関の低下がアセット間だけでなく同一市場内でも起きていることに言及されています。このように同一ユニバース内の銘柄の相関の大小でレジームを判定する、というのはよくある手法の1つです。

 

レジーム判定の方法にはいくつかあって、

(1) マクロ経済市況で判定する

CPIや国債利回り、TEDスプレッドなどの水準に基づいてレジームを判定します。この手法は株式インデックスから長期国債への切り替えなど、大雑把なアセットアロケーションに利用されることが多く、論文も多数見掛けます。

(2) 市場のボラティリティで判定する

市場インデックスのヒストリカルボラティリティについて、直近の値と過去の値を比較して判定します。例えば、直近3ヶ月のボラティリティと過去36ヶ月のボラティリティを比較したりします。もしくはVIXなどのボラティリティ指数の水準で直接判定する場合もあります。

(3) 銘柄の選好状況で判定する

高ボラ銘柄と低ボラ銘柄のリターンスプレッド、高ベータ銘柄と低ベータ銘柄のリターンスプレッドなど、銘柄の選好状況による投資家のリスクアペタイトを元に判定します。もしくは今回のトランプ相場での事例のように、ユニバース内での銘柄相関を観察して不特定の銘柄の挙動の変化を検出する方法もあります。

 

これらのレジームに応じて、アウトパフォームする銘柄が異なります。例えばモメンタム効果は低ボラ時に機能し高ボラ時に予測力を失う、と一般的に言われています。

また、上記のようなファンダメンタル的、テクニカル的な判定手法を用いなくとも、与えられたデータに対して直接統計的に有意なポイントで切り替えるという手法も存在します。これはマルコフ転換モデルという手法です(レジームスイッチモデルとも呼ばれます)。ただし、この手法はデータドリブンな手法であるため、統計的に算出されたレジームの概念が抽象的で理解しづらいというデメリットがあります。

 

ここからは個人的な見解ですが、レジーム判定を使いこなすことは非常に難しいと考えています。良いレジームを探すということは都合良くデータを選別することと殆ど同義であり、経験上、カーブフィッティングに陥る危険性がとてつもなく高くなってしまいます(ただ単に自らのスキルが低いだけかもしれませんが)。レジームを切り替えて状況に応じた収益向上を目指すよりも、戦略を分散させて如何様なレジームにも対応するほうがパフォーマンスは安定するような気がします。