これからの「お金」の話をしよう

(旧 システムトレードのススメ)

論文紹介(1)

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システムトレードに関する研究(というか金融工学に関する研究)は、世界中の金融機関や大学で常に行われています。それらの研究内容はノーベル賞を受賞するようなものから単なるバックテストレベルのものまでピンキリです。しかしどのような研究内容でも、それらについて知っておくことは決して悪いことではありません。大した内容でなくとも、時折重要なインスピレーションを得ることができるからです。

このコラムでは直近1年間くらいに発表された論文を紹介したいと思います。

 

「Cross-Firm Return Predictability and Accounting Quality」

(Wen Chen, Mozaffar Khan, 2015/9/28)

 

この論文は、投資対象企業を優良な財務指標を持つもの(Good Accounting Quality : GAQ)とそうでないもの(Poor Accounting Quality : PAQ)に分類し、重回帰モデルでそれぞれの翌月リターンを予測するというものです。

全くもって変哲のない論文なのですが、かなり良い結果が得られているので紹介しました(本当かどうか分かりませんが・・・)。

 

下の表は本論分の検証で得られた重回帰モデルの回帰係数およびT値を示します。縦軸が説明変数、横軸が目的変数です。また一番下の行が修正決定係数を示すのですが、最も良いモデルはなんと0.24となっています。

マンスリーの予測モデルを検証したことがないのですが、これは驚くべき数値と考えます。たったこれだけのファクターでリターンの24%が説明できることになり、結果が本当であればこのモデルを使った長期間の投資では負けるはずがありません。 

ただし注意したい点は、この手の論文は決定係数やS/Rを記載するだけで時系列の損益曲線などの記載がないため、どれだけその予測力が一貫しているか想像できません。アウトオブサンプルではボロボロになる可能性が高いと思います。 

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さて、この論文をそっくりそのまま日本の株式市場に適用しても全く使えないと思います。感覚的にそういうものなのです。重要なことは、この論文が実際に使えるかどうかを検証することでなく、そのプロセスや考え方からインスピレーションを得られるかどうかなのです。少なくとも私は、この論文のポイントは非常に重要であると感じました。この論文、グーグル検索で簡単に探せますのでよかったら一読ください。